Archive for 2013年9月4日

若冲が来てくれました

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福島市の福島県立美術館「若冲が来てくれました」

「よくぞ!来て下さいました!!」

そう思える展覧会でした。月並みな言葉ですが、美の持つ力を思い知らされます。来場者は老若男女実に様々な人たちで、誰もが笑顔でそして譲り合って作品を鑑賞していたのが印象的でした。生命力溢れながらもユーモラスな作品が多い今回の展覧会。これら全ては日本人による作品である事が嬉しくて誇らしくなります。作品の保護に必要なギリギリまで近づける配慮も有り難いです。作品タイトルは誰にでもに分かりやすいよう付けられています。とにかく楽しく見て元気になる素晴らしい展覧会です。

中でも気に入った作品を幾つか。若冲以外にも素晴らしい江戸絵画が来ています。まずは、見上げるのと、見下ろすお猿さん。

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それぞれ、違う方の掛け軸です。どちらもいきいきとしています。ちなみに、見上げた猿くんの視線の先には、ハチ!

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見下ろす作品の崖はほんの一部だけしか描かずに底知れぬ谷を想像させ、見上げる作品はハチと猿との絶妙な距離感が背景無しと合わさって、不思議な空間を演出しています。この二つに限らず、空間の美は江戸の特徴ですね。

素晴らしい屏風を2点。これらもそれぞれ別の方の作品です。

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上は、もともと大きな屏風というカンバスに目一杯大きく描かれた白い象と黒い牛。それぞれに、対照的な黒いカラスと白い犬が描かれているのですが、この子たちが何とも言えず愛くるしい。

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この黒い牛のお腹あたりにうずくまったこの腰砕けワンコは、あまりに寛ぎすぎてはいないだろうか 🙂

下の松の屏風の雪は、白い絵の具をまき散らかしているのです。ちょっとジャクソン・ポロックを連想しました。一つ一つの雪を大きさも考えて散らされている印象でした。

こちらには、なぜか木に登るウサギさんがいました。

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これら、若冲以外の中でも非常に印象に残ったのが、鈴木其一(すずききいつ)という方です。

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鮮やかな紅葉も素晴らしいのですが、私は右の青桐に釘付けになりました。雨に打たれる様を実に繊細に描いています。其一は他に白鷺の屏風と貝図がありましたが、そちらも見事。貝の縞模様の線などはあまりに凄すぎて絶句します!

そして若冲さん。まずは、今回の展覧会のコレクション所有者である、ジョージ・プライスさん、最初の一歩である葡萄図です。

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この水墨画については、今回の展覧会がテレビで紹介される度に映しだされていて、その際にも良い作品だなとは思っていたのですが、実物を目の前にすると、エネルギーに満ちた、たとえは変ですが、今にも動き出してしまいそうな葡萄でした。丸っこい葉っぱと実、曲がりくねり太さも極端な枝の対比、バランス。それを実に上品にまとめ上げているのです。

そして、最後は今回の展覧会の出発点になった作品。「花も木も動物もみんな生きている」です。IMG_1307

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モザイクのような作品。これらは、約1センチ四方の方眼が描かれ、その中の色も塗り分けられています。隣あったマス目が同じ色なら極力同じ模様を、違うとパターンも変えて描きわけています。しかもこれ手描きですね。どれだけの時間を費やしたのでしょう。常人には窺い知ることは出来ないでしょう。完成したのは、明るくピースフルな世界でした。

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とにかく、凄いコレクションでした。まとめて見られるのは今月までです。無理してでも行って観てきて下さい。会場へは、東北新幹線「福島」駅福島交通飯坂線に乗り換えて2駅目、「美術館図書館前」駅下車です。なお福島駅の飯坂線乗り場ホームは、「阿武隈急行線」と同じなので、くれぐれも電車をお間違えなきように。戻ってくるのはかなり大変です。(私は間違えました(^^;)

それと一つ目の「曽根田」駅前にあるそばや峰亀は、お薦めしておきましょう。