東京・丸の内の三菱一号館美術館にて、「ヴァロットン展 ―冷たい炎の画家」が開かれています。冷たい炎という言葉に引かれて見に行ってみました。
ヴァロットン。初めて耳にしましたが、今回が日本初の回顧展だそうです。ヴァロットンはスイス・ローザンヌに生まれ、16歳でフランスに移住しパリで活動した「ナビ派」の画家だそうです。ナビ派?カーナビとは違うよな?という事は脇に。まずは、20歳の自画像です。
結構イケメンですね。ちょっと影のある優等生的 🙂
でもかなり上手に描かれています。
こちらは、5人の画家という作品。ナビ派の画家たちの後ろにちょっとはずれて立っているのが、30代後半のヴァロットンです。この絵の位置関係。スイス人でしかも絵が上手だった事が、ヴァロットンをちょっと外された立場に置かされてしまったのかもしれません。それでも毅然と胸を張っているところなぞ、いいですね。
食えない画家だったヴァロットンは、大画商のバツイチ子持ち娘と結婚します。いわゆる逆玉ですね。生活は安定しましたが・・・。「夕食、ランプの光」という作品は、新婚家庭の食卓を描いています。右が妻、正面と左側がその連れ子です。手前の黒く塗りつぶされた人物こそ、ヴァロットン本人です。もう、何か彼の立場が・・・。
そんな立ち位置だったヴァロットンならではと思えるのがこの「ボール」です。
ボールを追う少女と、遠くで見守る2人の女性。どうもバランスがおかしく見えませんか?実は、視線の角度が違います。少女は上から見下ろし、遠くの女性はほぼ水平方向です。もしその2点の間にあるものを描いてしまうと、空間の歪みが分かってしまうので、樹木を描いたのでしょう。不思議な気持ちにさせる作品です。
この他、ユーモラスな作品もあって、たっぷり2時間かかりました。「冷たい炎」とは、「冷静な視線と隠された狂気」という意味合いなのかな。とても充実した展覧会でした。