ラファエル前派展から風景で印象深かったフォード・マドックス・ブラウンの「穀物の収穫」です。夕刻の赤い光に照らされた畑。そして醒めた青空にねぐらに帰る鳥たちとぼんやり浮かぶ白い月。思わず描きたくなるような風景です。会場には彼の作品が3点並んでいるのですが、どれも素敵な風景でしかも部屋に飾りたくなるようなちょうど良い感じの絵画でした 🙂
風景もう一点は、ウィリアム・ダイスの「ベグウェル・ベイ、ケント州-1958年10月5日の思い出」です。海岸で貝を拾い集めている人たちを描いたこの作品。何気ない風景のようですが、描かれた風景はタイトルのこの日だけのものなのです。秘密は空にあります。
円の中の白くうっすらとした線。これ実は当時、世界各地で観測されたドナティ彗星(ウィキペディア)です。ちなみに次に地球に近づくのが、3811年なのだそうです。残念ながら見られそうにないですね 🙂
最後にロセッティを。まずは「ダンテの愛」。ロセッティの洗礼名は”ダンテ”ですが、タイトルのダンテはダンテ・アリギエーリ(以降ダンテ)、叙事詩「神曲」を書きました。ロセッティはダンテに心酔していました。父親がダンテの研究者だった影響でしょう。さて、この作品。戸棚の扉パネル用に描かれたものです。随分と贅沢な家具ですね。元々が家具用なので、デザイン性が高いです。「神曲」の一節をヒントに左上の太陽がキリストで、右下の月がベアトリーチェ。中央に愛の寓意像が立っています。
ロセッティの描く女性は本当に美しいのですが、その中でも、今回の展覧会で一番美しいなと感じたのが、「最愛の人(花嫁)」です。
取り囲む人たちもそれぞれ美しく描かれていますが、引き立て役になって、中心の花嫁を際ただせています。
最後に展覧会のポスターに使われた「プロセルピナ」ロセッティが神話に題材を取った作品です。春の女神プロセルピナが手にしているのはザクロ。そのザクロの種を食べると1年の半分を地下世界、残り半分を地上世界で過ごすというように、両方で交互に生きなければならなくなります。
絵の中のプロセルピナは種を食べようか、少し逡巡しているように思えます。
この他にもまだまだ素晴らしい作品がありますので、是非たっぷりと時間をとって楽しんでいただきたいと思います。