ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞に輝いた黒木華(はる)さんももちろんですが、松たか子さん、倍賞千恵子さんも名演、さすがでした。
昭和の初め、山形から東京の「小さいおうち」へ女中奉公にやってきた黒木華演じる若きタキさんが、老いてからつづった(倍賞千恵子さん演)自叙伝を軸に、物語は進んでいきます。少しずつに戦争の影が濃くなる中でも、タキのいる小さいおうち平井家には幸せが満ちていました。ところが、ある台風の晩に起きた小さな波紋。それは結果的にタキを長く苦しめてしまう事に繋がって行きます・・・。
シンプルなストーリーで、導入部はちょっと退屈なのですが、現代と戦前の時代を行き来しながらストーリーが進むに連れてドンドン面白くなっていきます。黒木華さん演じる純朴な女中と、松たか子さん演じる上品な奥様時子。老いてからのタキを演じた倍賞さんは動くスピードに微妙な変化を付けて、健康状態を演じ分けられていたりと、女優3人の名演は見事。もう安心してその世界に浸れます。小ネタや伏線、くすぐりもちゃんと散りばめてあるところは、ベテラン監督の巧さでしょう。熱演の女優陣に比べ、男優陣は少し物足りなかったですが、それでも非常に上質なドラマだと感じました。あっという間の136分でした。
★★★★★