Archive for 2013年12月10日

ターナー展

去年から楽しみにしていましたターナー展です。上野の東京都美術館にて。

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”英国最高の巨匠 待望の大回顧展!”というのも納得の展覧会でした。出品点数は油彩約30点を含む110点。愛用のスケッチブックやパレット、絵の具箱までありました。

まずは、「バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨」という長めのタイトルがついた、ターナー23歳の時の油彩作品です。イギリスの田舎そのものといったイメージですね。

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この絵の発表時に以下のような詩の一節が、添えられていました。なかなかのロマンティスト。しかもちょっと自信も見え隠れしてますね 🙂

堂々たる儚い弓が
壮大にそびえ立ち、ありとあらゆる色彩が姿をあらわす

 

IMG_2074ターナーは、スケッチブック片手にイギリス国内を回っていました。廃墟となった修道院や聖堂を特に好んで描いたようです。デッサンが細かくされていて、一部さらっと水彩で色が着いていますが、これだけでも、質感や奥行きが表現されていて、並々ならぬ観察眼とそれを紙の上で再現できるテクニックを持っていたことが分かります。

これだけ実力がありながら、どうも人物は得意では無かったようです。

ft3_pic0145歳で描かれた「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ」という作品は幅3.3mもある大作です。タイトル、そしてキャンバスの広さからすればかなり控えめなラファエロで、しかもその描かれ方はすぐ脇の彫刻が施された柱に比してもシンプル。漫画チックでした。それでもこの空間を歪めた構図の取り方や、遠景の山並みまで続く街の様子など素晴らしすぎます。

晩年は、フォルムをぼかすものが増えていきます。また未完成のままというのもかなりありました。その中の一枚、「湖に沈む夕陽」です。

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この作品。彩色は一通り終わってはいますが、サインは入っていません。右手には丘と建物らしき影。左に白い点が置かれ、その付近に船のような影が入っています。 そこからの連想でタイトルが没後に付けられました。この絵がこの先どう描かれようとしていたのかは、ナゾのまま残りました。

これら以外にもたくさんの見応えある作品があります。たっぷりと時間をとっての鑑賞をお奨めします。