菱田春草展

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竹橋の東京国立近代美術館にて開催中の菱田春草展、大変混雑しておりました。ですがそれだけの事はあります。「落葉」をはじめ、鮮やかな色彩が印象的な秋景と鳥や動物たちという、季節的にピッタリな実に素晴らしい日本画の数々を堪能出来ます。

まずは、東京美術学校(現在の東京芸大)卒業制作の「寡婦と孤児」(写真は一部)うらぶれた部屋に漂う不安の霧におののく寡婦と、知らずに眠る無垢な孤児の対比が印象的でした。

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続いては、「秋景山水」「春景山水」。特に秋景はため息が出るほど美しかった。水彩のお手本にしたいくらいです。
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面白かったのが、この2作品。左が春草で、右は横山大観の作品です。並んで展示されていまして、線の強弱の付け方に違いがありますが、彩色はほとんど同じ感じでした。優劣は付けられません。春草の力量が推し量れるかと思います。

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展覧会前期に重要文化財の「落葉」が展示されていたそうなのですが、こちらの「落葉」も、その凄さが十分感じ取れます。葉っぱが実に丁寧に描かれていて、分かりづらいですが、枝や地面の鳥たちも生き生きとしています。
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枝に鳥というと、こちらも良かった。雀たちが絵から抜け出しそうなくらいでした。背景が無くなって、スッキリと描くようになってきました。

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最後にちらっと黒猫だけ紹介しておきます。

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黒猫は何匹か描かれていますが、何とも言えない表情のこの猫が私のお気に入りでした。ちょっと警戒態勢に入ったところでしょうか。この猫の上に描かれている柿も見事でしたよ。

春草は36歳と若くして亡くなっています。師であった岡倉天心が「不熟の天才」と評しました。今回の展覧会の約100点を見れば、その評価に頷けます。それにしても、もしもっと描き続けていたら、春草はどんな風に熟していったのでしょうかねぇ・・・。

 

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