リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝

リヒテンシュタイン。随分前に見たテレビ番組「水曜どうでしょう」のヨーロッパ編でドイツやスイスと近かったような、森林が広がっていた記憶があるだけでした。瀬戸内海の小豆島ほどの広さの国です。ハプスブルク家の家臣だったカール一世の美術コレクションが認められて世襲侯爵に処せられたのが、徳川家康の時代です。その後、神聖ローマ帝国から独立し、紆余曲折を経て現代にまでコレクションが引き継がれています。世界屈指のコレクションの一部が六本木の国立新美術館にやってきました。

「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」展。「ようこそわが宮殿へ」とまるでこの絵の子が言っているようですが、この子は言ってません。ともあれ、華麗なるコレクションです。特に「バロックサロン」これは豪華です。
バロックサロン
展示室をまるごと、宮殿の一部屋として再現しています。家具や彫刻、工芸品を並べ、タペストリーで壁を覆い、天井にも天井画を配しているのです。作品には番号だけが振られていますので、手前に置いてあるリーフレットをお持ちになった方がよいでしょう。
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このバロックサロンは入口から間もなくの展示なのですが、これはあくまで目玉の一つです。
その先の名画ギャラリーには、ルーベンスの作品がずらり。その中の一点。ルーベンスの娘、クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像です。この子は女の子だったのですねぇ。

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これは5歳ごろだそうで、ルーベンスは他に4点、クララを描いたそうです。この愛する娘はなんと12歳でこの世を去ってしまいました。

1点ラファエロも来ていました。ラファエロは来春の国立西洋美術館が楽しみです。
他にも、今年見た展覧会で印象に残った画家の別の作品に出会えました。エルミタージュ美術館展で「自画像」が美女過ぎると感じたエリザベト・ルイーズ・ルブラン
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の、リヒテンシュタイン侯爵夫人の肖像画「虹の女神イリス」という作品。

Highlight1 photo05本当に美しい女神。描かれ本人もさぞかし満足されたと思いきや、一族からこの絵にクレームが。曰く「素足とは怪しからん!」と。
そこで夫の侯爵は絵を飾った床に靴を揃えておいて、「靴を脱いで、宙を舞っているのです」とユーモアで返したのだとか。

ベルリン国立美術館展で、私はフェルメールよりも長く立ちすくんでしまった静物画、「果物、花、ワイングラスのある静物」を描いたヤン・ダヴィッドゾーン・デ・ヘームの静物画もありました。

描いたものの存在感が際立っていて、手に取れそうと思ってしまいます。

マウリッツハイス美術館展で小さな作品ながら妙に印象づけられた「笑う少年」

を描いたフランス・ハルスの「男の肖像」

やはり笑みが浮かんでいます。こちらもつられて笑ってしまいそうです。ちなみにフランス・ハルスはオランダの方です。

絵画ばかりではありません。「クンストカンマー」(アートルーム)に展示された工芸品の見事なこと。特にこの「牡鹿に乗るディアナ」はユニークです。

実はこれ、ぜんまい仕掛けの酒器なのです。鹿の首を外して中にお酒を入れて、ぜんまいで動かし、止まった前の人がその中身のお酒を飲むという、お遊びのものです。1610年頃の作品ながら今も動くのです!組み上げて動かしているムービーがそばに置かれたiPadで再生されていました。

まだまだ気になった作品はたくさんありましたが、それは会場に足を運んでご覧下さい。

さて、今回の音声ガイドは大地真央さん。解説はもとより、登場人物の侯爵やプリンセスなど、男女それぞれを演じ分けていらっしゃるのは、さすが宝塚出身だと楽しく聴けました。

大変見応えのある展覧会です。お天気がはっきりしなかったせいなのか、比較的ゆったり見られて楽しめました。ただし、見終えるとナイフやフォークが並んだ食事をしたくなるかもしれません(^^;

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