夏目漱石の美術世界展

IMG_1099 シンプルですっきりしたこちらの洋館は、東京芸大の前身、東京音楽学校の奏楽堂だった建物です。その昔、滝廉太郎や山田耕筰なども学び演奏したことでしょう。国の重要文化財ですが、つい最近までコンサートホールとして使われていました。今は保全のため休館しています。

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さて、東京芸大の美術館で開かれているのが、「夏目漱石の美術世界展」です。どちらかというとマイナーな場所での展覧会にもかかわらず、結構混み合っていました。

「坊ちゃん」にこんな一節があります。

「あの松を見たまえ、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」と赤シャツが野だに云うと、野だは「全くターナーですね。どうもあの曲り具合ったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙っていた。(中略)すると野だがどうです教頭、これからあの島をターナー島と名づけようじゃありませんかと余計な発議をした。赤シャツはそいつは面白い、吾々はこれからそう云おうと賛成した。この吾々のうちにおれもはいってるなら迷惑だ。おれには青嶋でたくさんだ。

この一節をヒントに展覧会に展示された絵がターナーの「金枝」という作品です。

The Golden Bough

確かに、傘のように開いてます 🙂

このように、小説等で言及された作品を出来る限り集めた展覧会なのです。「坊っちゃん」では上の引用文の直後にラファエルのマドンナ云々と出てきますが、さすがにラファエルの聖母は来ていません。

漱石は文展他、美術批評もしています。作品と批評を並べて展示しているのですが、挿画を描いてもらっている中村不折の「巨人の蹟」には、「そこまで言うか」的な辛辣コメントに吹き出しそうになりました。

言われた方は、「それなら自分で描いて見ろ」と思ったかもしれませんが、そんな漱石さん自筆の掛け軸が数点展示されていまして・・・。云うのとやるのは大違い。遠近感がまるで無いですし、そもそも形が取れていません。でも本人はかなり大まじめで取り組んでいたと思います。意欲は感じました。

漱石さんの人となりを美術を通して感じられる展覧会でした。またミュージアムショップも猫グッズを中心にユニークな物があったのと、漱石の小説も販売されていました。今回の企画のように、視点を変えた美術展は楽しいですね。非常に面白かったです。

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