ガマンの芸術

秋色。上野にある東京藝術大学の大学美術館です。ここで尊厳の藝術展―The Art of Gaman―が開かれています。

今から70年前。第2次対戦の最中、アメリカで普通に暮らしていた多くの日系人が強制収容所に送られました。今まで築いたきた生活を手放さざるをえず、手荷物だけで、砂漠の荒れ地で自給自足に近い生活を強いられたのです。名前ではなく番号で呼ばれ、粗末なベッドだけのプライバシーのない集団生活。床板は隙間だらけで、砂嵐が来ると、そこから砂が室内に吹き込みます。隙間から入ってくるのは砂だけではありません。時にはサソリもそこから入ってきたとか。想像以上の過酷な状況は3年以上も続くことになります。

しかし、そこで生きていかなければいけません。

その為に家具など生活に必要なものを手作りしました。端材でできた無骨だけれど温かみのあるイス。ツルツルに磨かれた石などを装飾に使った引き出しなど。それらを産み出す道具も時には作っていたようです。手作り故、使ったらきっと指が痛いだろうというようなハサミも展示されていました。

見事だったのは、生活を彩ったものたち。木の根や古い歯ブラシ張り具合を動物に見立てた置物は、鳥のブローチもカラフルでキレイ。木片を削って磨いて作ったそうです。でも足の細さは木では表現できないので、思いついたのが、窓に嵌められた網戸の端の部分の針金でした。地面を掘って出てきた貝殻を集めて作られたブローチも素晴らしい。

他にもたくさんの驚きがある展覧会でした。そしてこれらを産み出した人々の精神力に感動させられます。2年前にアメリカで”ガマンの芸術”として紹介されたのが基となった今回の展覧会。来月12月9日までの開催で、その後福島、仙台、沖縄、広島と巡回します。なお入場は無料です。

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